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ヤギ胎盤における20α-水酸化ステロイド脱水素酵素の発現とその役割

20α-水酸化ステロイド脱水素酵素(20α-HSD)は、プロゲステロンを生物学的に不活性な20α-ジヒドロプロゲステロン(20α-OHP)に代謝する酵素で、ラットやマウスでは主として黄体や胎盤に発現している。本研究においてはシバヤギの胎盤における本酵素の役割を明らかにすることを目的に、20α-HSD遺伝子の発現、および母体血液、胎子血液、羊水中のプロゲステロン、20α-OHP濃度の経時的変化を解析した。まず、妊娠40日、90日、130日、145日のシバヤギの胎盤における20α-HSD遺伝子の発現を調べた結果、妊娠40日では20α-HSD mRNAはほとんど検出できなかったが、90日で大きく上昇...

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Published in:The Journal of reproduction and development 2005-04, Vol.51 (2), p.265-272
Main Authors: 米澤, 智洋, 石田, 真帆, Jayasekara, W.S.N, 山内, 啓太郎, 西原, 真杉
Format: Article
Language:Japanese
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Description
Summary:20α-水酸化ステロイド脱水素酵素(20α-HSD)は、プロゲステロンを生物学的に不活性な20α-ジヒドロプロゲステロン(20α-OHP)に代謝する酵素で、ラットやマウスでは主として黄体や胎盤に発現している。本研究においてはシバヤギの胎盤における本酵素の役割を明らかにすることを目的に、20α-HSD遺伝子の発現、および母体血液、胎子血液、羊水中のプロゲステロン、20α-OHP濃度の経時的変化を解析した。まず、妊娠40日、90日、130日、145日のシバヤギの胎盤における20α-HSD遺伝子の発現を調べた結果、妊娠40日では20α-HSD mRNAはほとんど検出できなかったが、90日で大きく上昇し、以降妊娠末期まで高いレベルが維持された。In siu hybridizaionによる解析の結果、20α-HSD mRNAは胎盤の母体側の子宮内膜上皮に発現していることが示された。胎盤以外の子宮組織においても、妊娠90日で20α-HSD mRNAの弱い発現が、130日、145日で強い発現が見られた。また、妊娠130日の胎盤、子宮のサイトゾールを用いて調べたところ、20α-HSD活性が検出された。母体の血清中プロゲステロン、20α-OHP濃度はともに妊娠40日よりも90日、130日で高く、分娩直前の145日には低下するという変化を示した。一方、胎子血清中20α-OHP濃度も90日、130日では高く145日には低下するという消長を示したが、すべての時期で母体の血清中濃度よりも高かった。しかし、胎子血清中プロゲステロン濃度、および羊水中のプロゲステロンと20α-OHP濃度は妊娠期間中、きわめて低値に維持されていた。以上の結果は、胎盤の2α-HSDはプロゲステロンを異化し、胎児を低プロゲステロン環境下におくことによりその毒性から保護しているという仮説を支持するものである。
ISSN:0916-8818